水野和夫氏、公聴会で発言

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少し前まではテレビでもよく見ていたのだが、最近めっきり見なくなった水野和夫氏。温厚な人柄から語られる彼の話は、巷にあふれる経済学者とは違い、えらい人の孫引きだけを自らの言葉の論拠とするだけでなく、物事を本質的に捉えようとする意思が強く感じられる。

この水野氏が衆議院の2008/2/16日の公聴会で発言した。他でななかなか聞けない内容を含んでいると思うので、ここで内容を紹介しておきたい。

構造不況の長期化
2002年からの景気回復においても、中小企業、非製造業は不況が続いている。景気がよくなったのは大企業、製造業。世界同時不況によりこれらも構造不況化する可能性。

景気の現状
08年度から5年間でGDPが12%(67兆円)減の可能性。
アメリカとヨーロッパで8兆ドルの過剰債務が生じた。これは主に家計が負っている債務。これを解消するには消費を抑制して、借金を返す。8兆ドルを返すには最低でも5年かかる。よって欧米向の輸出が伸びない。よってこの5年間日本の輸出が伸びずGDPが縮小する。

今回(02~)の景気回復では機械工業のGDP寄与率が82%。輸出の整備投資の寄与率は96%。流通は99~からの景気回復、02~の景気回復で見てもマイナス成長。景気を牽引しているのは機械工業とサービス業。機械工業がGDPに占める割合は14%。

景気の山と谷を決めるのは、ほとんど大企業製造業。
中小の非製造の景気のピークは90年。この後ずっと右下がり。雇用者の6割を占める中小の非製造業だけでみるとずっと不況が続いている。

日本経済がより外国の影響を受けるようになり、不況のときほと受けるようになる。

1990年(バブル後)から大企業と中小企業の格差が広がり始めた。

欧米の経済は過剰債務が終わってもこれまでのように3%の成長で世界経済を引っ張っていくのは難しい。よってこの不況の間に輸出先を欧米からアジアに切り替える必要が出てくる。中小企業、非製造業は下がりつづけているから、次の景気回復でもあがる可能性はすくない。アジア経済圏の成長してくるので、そのときアジアの内需拡大を日本の内需拡大ととらえるかが重要。

95年から金融のグローバリゼーションが進んだ。その過程で先進国では100兆ドルの金融資産が増えた(日本では5兆ドル)。だがこれ以上拡大する可能性は少ない。その代わり新興国の実体経済のグローバリゼーションが加速してくる。

日本の成長モデル(安く仕入れて高く売る)が効かなくなってくる。これからは高く仕入れて安く売るモデルに変わってくる。

質疑
Q:75兆の景気対策予算についての評価は?
A:財政措置が12兆、GDPの落ち込みは45兆円なので力不足。だからといって45兆円の真水ベースでも効果がない。90年から6割の雇用者が占める中小の非製業では12年にわたって真水70兆円追加補正をしながら下がりつづけているので、構造を直さないとならない。

Q:長期債務残高、平成21年度末508兆円(GDP比では158%)。先進国の中でも非常に高い。この状況を踏まえてどのように財政再建を進めればよいか?
A:歳入歳出構造が、時代の変化に対応できていない。これを見直した上で、しかしそれでも残高はまかないきれないので普通税率での消費税で。

Q:10~12月のGDPはマイナス12.7%、1~3もマイナスになる。上場企業の経常利益(4~12)はマイナス74.7%。当然法人税が下がる。日経平均、PER65倍、一株あたりの時価が715円。経済の振幅が大きくなっている。法人税がどのくらいになると予測しているか?
A:製造業は赤字なので法人税は0、非製造業は9割減なので、法人税は大幅な減少になる。来年度も同じと思われる。

Q:09年の名目GDP510兆円、10年は519兆円、11年は530兆円。これが順調回復シナリオの数字。水野さんの話だとこの前提が崩れる。この想定に妥当性はあるのか?
A:そうとう厳しいと思う。欧米の景気のV字型にならない限り難しい。

Q:アメリカ発の金融危機と言われているが、日本が貿易黒字で生み出した資金は日本に還元されず結局金融危機の資金のとして流れていったのではないか?よってアメリカの話ではなく、日本の責任もあるのではないか?
A:そのように考えている。アメリカが世界中からお金をかき集めて、他国の貯蓄を自由に使えるようになった。だからこそアメリカは消費主導の景気拡大になった。それに呼応する形で日本は輸出指導になった。よってアメリカ発と捉えると今後の対処方法を誤る。

Q:アジアとの関係において金融の面からどのような対策が必要か?また環境分野ではどうか?
A:これまでの輸出先は欧米であった、アジアとなると所得水準も価値観も違う。そうなると中小企業もアジアの内需を自分達の内需として捕らえていくようになる。よって金融面の対策は、中小企業が海外に進出できるように支援するかが大事。環境問題についてはこれをクリアしないとオイルショックのようなものが起こる可能性がある。

Q:麻生総理が消費税増税を言っている。回復に水を差すのではないか?増税の景気に対する影響を聞きたい。
A:長期的に見れば増税は必要。いま言う必要はないと思う。いうのであれば02~07の景気回復のときに道筋をつけて実施されていなければならなかった。

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