Javascriptでのイタズラと形式犯罪論

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Javascriptで無限ループを利用したコードでモーダルなメッセージを表示するページへのリンクを貼ったことで、警察が3人を補導または家宅捜索した。

この問題の根本は犯罪あるいは刑法の学的認識にある。今の日本は19世紀中頃からドイツで進展した実証的刑法の思考が支配的である。実証的刑法と言っても深い意味はなく感覚と常識を頼りに現実に適応していく考え方で、それ以前のドイツの刑法理論である権利を基礎とする刑法論を理想論として批判していく立場である。

新旧両派の対立といい、旧刑法に対して現実に適用できないと感じた新派が刑法をつくりかえて今の刑法になっている。

このような実証的な刑法が広がったのは社会状況に法が対応しきれなかったことが原因で資本主義の矛盾により社会が荒れたことにある。日本の現状はITの高速な進展と資本主義の没落である。現状に対応できなくなった意識が法の不足を感じ、準備不足のまま施行されてしまっている。

ウイルス作成罪

第百六十八条の二 正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録

二 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録

2 正当な理由がないのに、前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。

3 前項の罪の未遂は、罰する。

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=140AC0000000045_20170713_429AC0000000072&openerCode=1#737

「正当な理由」、「意図に沿うべき」、「意図に反する」、「不正な指令」など法律に書くべきではない言葉が列挙されたものになっていて未熟で危険な法律になっている。何が正当で何が不正なのかわからないし、それを警察や社会通念や裁判にゆだねるなら法の意味がない。

ウイルスによって侵害されるものはなんなのか。それを明らかにしていくことが法の使命であるにもかかわらずそれを投げ捨ててしまっているのである。ではウイルスによって侵害されるものは何かを考え国民に周知しなければならない。それを考えるには所謂実証主義刑法あるいは新派の考え方では十分ではなく権利侵害説で考えることが必要になる。

所有権侵害

ソフトとしてみた場合PCに何をすれば権利の侵害になるか。量からすればPC内に存在するファイルの大部分はPC所有者の所有物ではない。よってまずはファイルをPC所有者のものとそうでないものに分けることが必要になる。ここでPC所有者が作成したファイルAを考える。権利の侵害として考えられそうなことは、Aを閲覧する、Aを変更する、Aを削除する、Aをコピーする、Aを移動する、Aを暗号化するなどである。Aを閲覧つまり見ることは権利の侵害になるだろうか、一般的には見ることにより犯罪になることはないが、のぞき見のような場合は軽犯罪法違反になる。

PC所有者が所有していないファイルの場合はどうか。この場合はPCを機能不全にしたり、勝手な動作をさせることが目的になる。自動車に細工しブレーキを効かなく場合は傷害や殺人に関わるだろう、同様に犯罪者の意図によって分類できるものである。

ITと法

法は人と人の関係であるからそこにITが登場してきても基本的には変わらないはずである。ITによって人の関係がどう変わったのかを確認し法がどう対応するか、という問題になる。ITをハードの側面だけでとらえた場合は今までの有形物あつかいと同じで特に注目するところはないので、そのソフトとしての側面をまず2つに分ける。

情報の時空間的拡大

情報の伝達はITなしだと基本的には一対一だったが、IT空間では一対多が簡単に行えるようになる。法では一対一の関係を民法、一対他の関係を刑法とみると刑法の役割は大きくなる。

情報の生産

一対多が簡単に行えることにより情報生産の需給も増えることになる。ハードの生産を「設計」と「生産」に分けるとき、情報の場合は人が行うのは「設計」だけであり、生産は機械が自動的に行ることになる。この違いにより経済構造も変革を迫られるが、法においても著作権が大きな位置を占めるようになる。

まとめ

全然記事としてまとめられないが現状で未熟な法律がありそれによる犠牲者も出ているので、少しずつ論点を絞って記事にしていきたい。