オワコンでもなかった70年談話

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70年談話、さすがに予想とは全然違うものになった。

一番強く出たのはこの視点で、不戦条約を境に戦争違法化の時代が来たのにもかかわらず、日本は力の行使、すなわち侵略を行ってしまい、それが間違いであったことを認めている。1928で歴史を区切るのは東京裁判と同じだから、安倍内閣が始まってからいろいろ出てきて安倍自身も賛同的な立場をとっていた歴史修正主義は断ち切られた形になる。

だが、前半の植民地支配はあたかも欧州の悪口のように書かれていて、日本も台湾朝鮮を植民地化したことには触れていないのは公平でない。日露戦争がアジアを勇気づけたと書くが、日本は政府としては日仏協約、4か国条約などにより常に欧州列強と足並みをそろえてきたし、その期待を今後大きく裏切るのだから一面的記述だろう。

連合国の第二次大戦の反省として出たものの一つがIMFだが、これはブロック経済を否定し自由貿易を確保するものだ。ここで談話はブロック経済の下でそれに対抗する措置をとれなかったことを戦争の原因にしている。足元の政治で見ればこれはTPP推進の論拠であり、アメリカの体制であり、歴代自民党の体制でもあり、ネオリベの体制でもある。ここで注意すべきはなぜブロック経済になってしまったのかという視点で、これは談話では述べられていないが、もっとも広く言えば自由貿易だけでは国内が疲弊していきいつかは耐えられなくなるからだ、もちろんあの時期のブロック経済は特殊事情もあるので自分でも整理できていないが、今の日本を見ても日本人はどんどん貧しくなっているのである。ここで今の日本がこの貧困化を阻止できるような経済政策をもっているかといえばNOというしかないのだから、自由貿易と貧困がともに進むことになるだろう。

連合国の反省に2つめは人権の強化である。貧困を放置すると国が荒れて戦争になるのでそれを防ごうという目的、戦争という視点で見ればそう言える。これも今の日本が十分にできているかとなればNOとしか言えない。人権委員会に何か言われても積極的対策をしようという意思は感じられないし、アメリカの人身売買白書でも先進国中唯一2番目のランクだし、慰安婦問題では強制や性奴隷といった言葉を低い意識でしか理解できないし、政治家は積極的に人権や自由という言葉を使うことはない。日本は戦争を起こした立場上人権を強く意識しなければならないし、今現在の日本の人権意識は非常に低いということも意識しないとならない。

謝罪を続けるかどうかの問題。談話を読んで善意に解すれば談話で示された歴史を否定することなく真理として受け入れる基盤ができたならもはや謝罪は同じことの繰り返しにしかならないのでいつかは終わるだろう。だがこの一文だけを切り取ってもはや謝罪する必要がないなどと強調して歴史認識をおろそかにすれば謝罪は終わらないだろう。

この談話で消えた視点は植民地支配への謝罪である。欧州のも含めてこれを学問的論理的に間違いであったというのは難しいはずで、それは経済的に進んだ国が遅れた国を取り込んでいくというのはそれが認められないと地球規模での物質的進化を否定することになってしまうからだ。とはいえ謝罪というのはどんなレベルで行ってもよく今回の談話では昨今の韓国との関係悪化が前面に出すぎているといえる。日韓関係はそれ自体で特殊なものだからこれについても今後双方が理解を進める必要があるだろう。

最後に当時の政府と臣民の関係。間違った判断により苦しい思いをしたのは日本人も同じだ。当時の民主主義や議会はまだ十分権力を持っていないので、国民も責任者だといって切り捨てることはできない。満州事変の真実を明かさなかったこと大本営が都合のいい発表ばかりしたこと、これらは謝罪したっていい。今でも経済の話では十分にできているとはいいがたいが、国民を信用して問題にはともに取り組む姿勢が民主主義のはずだ。